2012年05月11日

長崎伝習所 塾開所式(2012年5月11日長崎新聞)

長崎新聞(2012年5月11日付け)より転載します。


町ねこ調査や物語づくり―長崎伝習所 5塾が活動スタート

人材育成などを通じて地域活性化に取り組む長崎市の「長崎伝習所」事業の一環で、歴史や観光など多様なテーマごとに研究を進める「塾」の開所式が9日、長崎市築町のメルカつきまちであった。

本年度活動するのは、昨年から継続する「長崎の町ねこ調査隊塾」「孫文・梅屋庄吉と明治大正長崎事情塾」に加え、長崎の歴史的事実などを題材にオリジナル物語を作る「ながさきで物語をつくろう塾」、東京で活躍する長崎人や長崎料理などを紹介する「東京出島塾」、東京目線で長崎の新しい観光ルートの提案などに取り組む「在京長崎・感・考・塾」の5塾。計113人が「塾生」に登録した。

開所式には、東京都内で活動する塾を除く三つの塾が参加。伝習所の総長を務める田上富久長崎市長は「まちづくりに自分たちで取り組む人たちの集まり。多くの人とつながり、いい成果を出してほしい」とあいさつ。各塾長が「ネコ調査のエリアを広げたい」「物語が子どもや未来に広がっていけばうれしい」などと活動内容と方向性を発表。式後は各塾に分かれ、参加者の自己紹介や今後のスケジュール確認をした。

「塾」は、市民から研究内容を公募し、審査を経て活動塾を決定。塾生を一般募集する。開所式では応募した塾生が初めて顔を合わせた。

(永野孝)

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2012年04月23日

長崎伝習所平成23年度研究成果報告書(4) 塾生の感想

「長崎の町ねこ調査隊塾」に参加して

長崎の町ねこ調査隊塾に入り、あらためて猫の実態を垣間見ることができました。町ねこは自分の意志ではなく生かされている。私は猫をみると「頑張ってるね!」と声をかけてしまう。暖かい春の日射しを浴びている時は穏やかにくつろいで見えるが、極寒の冬はさぞかし辛いことだろう。しかし彼等は懸命に生きている。人間の英知で不幸な子猫を産まないよう環境を整えたい。そして保護できる施設を心から欲しいと思う。猫は私達人間にとってかけがえのない仲間なのだから。(S.E)

「町ねこ調査隊」と聞き、不思議な好奇心にかられて1年。猫に関する自由研究を塾長 、副塾長を中心に築いてきました。心がとても温かくなり笑顔が絶えない1年でした。次年度も、さらに皆さんとともに勉強したいです。(T.O)

たかが猫と思っていた町ねこは、1年間のつきあいの中で、町の人、旅人にとって癒しの存在であることに気付いた。さらに調査を広げて、町ねこの存在をより高めていきたいと思う。(M.O)

無理に親から引き離され、簡単に捨てられた子犬や子ねこたちを待っているのは殺処分です。そのことを思うと、とても辛く、心が痛みます。人間も動物も姿形が違うだけで同じ命なのです。殺処分を廃止して、動物保護センターを作りたい。そのためにはたくさんの人に呼びかけ、話し合いの場を設けたいと思います。(Y.O)

単独行動のネコたちも生活環境によっては群れて暮らすということを山根明弘さん(北九州市立いのちのたび博物館)から学びましたが、長崎の町ネコとの出会いだけでなく、ネコ仲間と群れることが出来て嬉しい塾でした。(K.K)

我が家には2匹の猫がいます。塾生の中にはたくさんの飼い猫がいてその上保護のため一時預かりをしている「つわもの」もいらっしゃいます。長崎は猫の多い町と耳にします。猫との共生を私なりに考えるために町ねこ調査隊に参加しました。私達の活動を基に野良猫を排除するのではなく、共生できる町になるといいですね。(M.K)

人目を憚ることなくねこへにじり寄り存分に撮影や観察ができたこと、また、コミュニティーとしての「町」について考えるきっかけにもなった、楽しく充実した1年でした。(Y.S)

テレビで「地域猫の活動」を知り、猫が取り持つ人の和に期待して、この塾活動に参加しました。塾では、猫に関する知識を得、身近な「町ねこ」たちを観察することで、私自身が「町ねこ」たちに成長させてもらった1年でした。
追伸:害獣ネズミの天敵である「町ねこ」の役割にも改めて着目したいと思っています。(M.T)

もともと子ねこの里親さん探しや地域ねこ活動をサポートするボランティアから、この町ねこ調査に足を踏み入れることになりました。「ふつうの人々」が町でみかけるねこにどんなふうに接しているのか、改めて気づかせてくれた調査隊塾にはとても感謝しています。塾長の中島さん、塾生の皆さん、1年間おつかれさまでした。これからも続けていきたいですね。(J.N)

山と海、古い町並みの残る長崎には、ゆったりと寝そべる猫の姿がよく似合います。町ねこ調査を通じて、猫と人とが気持ちよく共存できる社会を実現できるよう、これからも活動を続けたいと思います。(H.H)

もともと猫が大好きで参加しましたが、塾の活動を通して、「猫が好きじゃない人」「関心がない人」についても考える機会を得ました。町ねこを考えることは人と地域社会を考えることだと実感しています。(K.M)

久しぶりに塾に参加した。猫を愛する心優しい人々と会っていると他の事は忘れて猫の事だけを考えている。猫が学問になるとは今まで考えたこともなかった。動物たちも幸せに生きていけるやさしい町であって欲しい。(H.M)

当初からその困難さは予想されてはいました。生態学の研究に端を発した本調査が、ねことの共生への道しるべとして実用化たり得るのか? 非常に難しい課題への取り組みと言わざるを得ません。しかし「誰かが行動を起こさなければ状況は変化しない」という、塾長のはやる思い・熱意に動かされ、模索しながらの活動を続けています。調査データの集積が思うようにいっていない現状ではありますが、「うさぎとかめ」のかめのごとく、ゴールを目指して小さな歩みを進めていきます。(事務局=H.H)

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2012年04月22日

長崎伝習所平成23年度研究成果報告書(3) 町ねこ調査の経過について

町ねこ調査の経過について

・町ねこカルテ

2011年5月に長崎町ねこ調査隊塾が発足してお互いの顔合わせが済み、各塾生の「ねこエピソード」を述べ合ったりして連帯感を高めたあと、いよいよ「町ねこ調査」なるものの実際を定例会で取り上げたのは6月4日のことだった。できあがったばかりの「ながさき町ねこカルテ」が塾生に配布される。A5横サイズのカードの左側にはねこの名前や性別、記録場所などの記入欄とメモスペース、右上にはねこの大きさやしっぽの長さ・太さ、毛色・毛柄などの記入スペース、そして右下にはひときわ目を引くねこの顔と体のようすを描き込むための「塗り絵」欄。

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【町ねこカルテイメージ】

「これさえあれば、誰でも、どんなねこでもきっと識別調査ができます」――とは言っても、これまでの各塾生のねこへの関わり方はさまざま、20匹以上の保護ねこを抱えて獣医顔負けの知識を持っている塾生もいれば、これまで特にねこを飼ったことがない塾生もいる。「最低限これだけは共有しておこう」と作った資料は、(1)ねこの毛色・毛柄の表し方、(2)細部の特徴への注目のしかたにポイントを絞った。

・ねこの細部に注目する

「茶色の縞々のねこは、黄土色の地に赤茶の縞を持つ〈チャトラ〉と、薄茶色の地に焦茶の縞をもつ〈キジトラ〉がいる」「黄・茶・黒の3色が入り混じった複雑な模様のねこを〈サビ〉という」「三毛猫のぶちは手足や顔・胴のどの部分にどんな色が入っているだろうか」「チャトラの額にはM字の縞か平行縞かどちらがあらわれているだろうか」などなど、実際の長崎の町ねこを撮影した写真をもとに、みんなでわいわい話しながらチェックしていく。

「あら、うちの前飼っていた子にそっくり」「この子は鼻の部分のぶちで器量が台無しねえ」「ひとことで〈三毛〉と呼んでいたけど、一匹一匹柄がこんなに違うもんかね」。写真をカルテに描き込んでいくうちに、ねこの体の隅々にまで注意を払うようになっていく。しっぽの長さは? 太い?細い? どこかに特徴的な柄は? この模様はいったいなに色の毛が集まって表われるのか? おなかの白い部分はどこまで?

・カルテを持ってまちに出る

ひとしきりカルテと格闘してから、いよいよ実地に繰り出した。場所は市民会館から寺町周辺、ねこがすぐに見つかるかどうかが懸念されたものの、すぐにとびきりフレンドリーなクロ、サビ、シロたちに出くわす。写真撮影とカルテ作成の2人1組で分担のはずだったが、まずはみんなねこをナデナデ……ナデナデ……ナデナデ……と、ねこ好きぶりを各自遺憾なく発揮。

結局最初のねこたちを20分近くもかまった(かまわれた?)あと、次のねこ探しへと移動して、またそこでもナデナデして写真を撮ってカルテを描いて、都合1時間ほどかけて15匹ほどのねこたちに出会ったのが、町ねこ調査隊塾での初町ねこ調査だった。

・ねこを「識別」する

大事なのはその次の回、6月19日の定例会。「前回識別してカルテにした町ねこを、今回も識別できるか?」 それができてこその「個体識別」であり、継続調査としての価値が出てくるのだが、果たしていかに――と、これまたうまい具合に、4日の調査の時に顔だけ記録したら逃げてしまった三毛の子ねこのカードと、目の前で走り回っている三毛の子ねこの柄がぴったり重なった。「おお!」と感動する間もなく、急いで体と手足の特徴をカードに追記する。写真班も何枚か三毛の写真を記録に収めて完成した町ねこカルテは、後日開かれた「ながさき町ねこ写真展」でも展示された。

効果が実感できればしめたもので、この日はそのまま延命寺まで足をのばし、識別しづらいキジ・サビねこの多さにたじろぎつつも、カルテの枚数は着実に増えていった。

・データを蓄積する

秋頃までには、調査技術にも次第に磨きがかかり、単独で写真撮影・カルテ作成と継続観察を行なう塾生もぼちぼち現れるようになった。その結果の一部は今年度の塾成果のひとつである『ながさき町ねこハンドブック』に掲載されている。

2011年度末現在で、ある程度の分量の調査データが蓄積できた地区は寺町周辺、西坂公園周辺、住吉町、長崎大学文教キャンパスの4か所、1回〜数回の単発調査を行なった地区は伊良林、新大工町・桜馬場・鳴滝周辺、丸山町・寄合町・中小島周辺、十人町・中新町・館内町周辺、ダイヤランドの一部、曙町、青山町などとなっている。

・町ねこ調査から見えてきたこと

これらの町ねこ調査を通じて見えてきたことはいくつかあるが、何よりも重要な点は「調査をすることによって初めて、自分が今までいかに漠然としか町ねこを見ていなかったかを実感した」という点である。塾生は(濃淡こそあれ)ねこは好きであり、みな自分なりに関心を持ってこれまでも町ねこに目を向けてきたつもりだったが、調査のために路地を一本一本入り、家と家のすきまをのぞき込みながら歩くことで、思いのほか豊かな町ねこの世界を垣間見ることになった。そしてまたその町ねこの世界は密接に私たち人間の生活空間とつながっていて、ねこ好きもそうでない人も町ねこも否応なしに併存していることも痛感させられた。

裏を返せば「町ねこ調査をする」ということは、そうした「人間とねこは同じまちのなかでともに暮らしているということを改めて考え直す」機会だと言える。町ねこのカルテを1枚1枚描くことを通して、それぞれのまちの人間とねこの関係は、ありありと見えてくる。丸々と太って幸せそうなのか、毛並みもやつれお腹をすかせてうろついているのか。たくさんの子ねこが生まれたと思ったらいつの間にかいなくなるまちもあれば、迷い込んだノラネコに優しく手をさしのべるまちもある。ペットボトルやねこよけの並ぶまちなみのすぐ隣には、きれいに手入れのされたフラワーポットのそばでねこがのどかに昼寝をするまちなみが連なっていたりもする。

少し大げさな言い方をすれば、「町ねこは、その町を映す鏡である」ということになるだろうか。願わくは、すべてのまちで人とねことが宥和して暮らすことができますように。

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